1986年に誕生し、スポーツウォッチの草分けとなったアイアンマン 8ラップ。初代アイアンマンの愛称で親しまれるモデルが、この度"完全復刻"版として登場する。過去の復刻版と比較しても、最も忠実な復刻となる"2022年版"。初代アイアンマンとは一体どんな時計で、何が特別なのか? 発売を記念して、各界の鉄人たちに話を聞いた。

写真/谷口 岳史 文/秦 大輔

 

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ビームスのショーケースの一画には、創業した1976年当時からタイメックスの時計があったという。関係は現在まで続き、毎季にわたり多彩なコラボモデルをリリースしている。そんなビームスで時計のバイイングを担当するお2人は、公私にわたるアイアンマンの愛好者。この度、オリジナルの忠実復刻モデルとして登場した初代「アイアンマン 8ラップ」も、ビームスの店頭に並ぶ。服に、時計に、時代の空気に鋭敏な目をもつ"ファッション鉄人"が、アイアンマンを語る。

 

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ビームス メンズカジュアルバイヤー 梨本大介さん

ビームスと同じ1976年生まれ。アルバイトを経て入社。B印 ヨシダでは初期から商品企画に携わり、ディレクターを務める。2021年より現職。仕事のモットーは"基本を大事に、常に挑戦を"。オフは、家まで建てた屋久島ライフを満喫する。

 

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ビームス メンズカジュアルバイヤー 野﨑亮佑さん

1992年生まれ。学生時代にブラックカルチャーやストリートファッションに傾倒。2014年に入社し、原宿本店のVMD等を経て、2021年より現職を務める。仕事のモットーは"ブランドイメージを大切に、ビームスらしさ、自分らしさを表現する"。

 

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──アイアンマンとの出会いは?

25年以上前にビームスで。以来、23本買いました」(梨本)

「新人時代にショップのトレーナーに薦められました」(野﨑)

 

梨本:ビームスへ入社したのが25年前くらい。その前からもちろん存在は知っていて、いい時計だなぁと思っていました。ビームスの店頭では当時、ミリタリーウォッチの"キャンパー"が主流で。でもその脇にアイアンマンがあったんですよ。○○ラップとか、どのモデルかは忘れちゃいましたが、買いやすい値段でしたし、何よりカッコいい。早速買って、以来、23本は買いました。思い入れがあるので、今回の取材のお話をいただいたときは嬉しかったです。

 

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野﨑:僕は2014年に入社したのですが、最初に配属されたのが新丸の内店で。新人を指導するトレーナーに「とりあえずこの時計を買っておけば間違いない」と推された時計の1つがアイアンマンでした。ちょうどオリジナルが復刻されていたタイミング(2013年に復刻)だったので、それを買いました。

 

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※ビームスの創立25周年を記念してリリースされた、アイアンマンのスペシャルモデル。「結構使ったんでストラップがボロボロになっていたんですが今日完全に壊れてしまいました(笑)」と梨本さん。「直球な周年記念の表記とか、今ではあまり見られない。時代を感じさせますね」と野崎さんの評だ。

 

──アイアンマンのどこが好き?

「ドレスファッションにも合う懐の深さ」(梨本)

「唯一無二のチャレンジングなデザイン」(野﨑)

 

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梨本:スポーツウォッチとしての機能的な魅力はもちろんありますけど、カジュアルからドレスまでどんなファッションスタイルにも合うところです。クリントン元大統領もスーツにこれを合わせていましたからね。ケースが薄いから袖に干渉しないんですよ。

 

野﨑:僕らの世代だと思い浮かばないスタイリング。でも、スーチングをちゃんとできる人がハズシでアイアンマンを着けていたらすごくカッコいいと思いますし、今っぽいミックスな気もします。今季ビームスは"Y2K"と呼ばれる2000年代前期のスタイルにも注目しているのですが、当時の最先端だったテクニカルなシェルなんかにも相性がよさそうだし、合わせたい。古着っぽい服装にもストリートっぽい服装にも、本当にどんなスタイルにも合う時計ですね。

 

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梨本:それからデザインでいうと、線の入り方とかカラーリングがカッコいい。意表を突いてくるところがあって。セオリーでなく感覚でモノを作っているといいますか、いい意味の無骨さ、アメリカっぽさを感じます。

 

野﨑:水色の使い方にセンスを感じますね。僕らの感覚ならグレーかホワイトで馴染ませるところに、さらっと水色を持ってくるところがすごい。

 

梨本:その水色のトーンがまた絶妙という。

 

野﨑:ですよね。それから機能という機能に逐一説明を入れていたり、ビスが剥き出しだったりするデザインも衝撃的なんですが、それでいて破綻しないようちゃんとまとめあげるセンスを称えたいです。この唯一無二のビジュアル、レトロフューチャーな匂いのする顔が好きです。

 

梨本:ホント、今見てもカッコいいよなぁ。そもそもがスポーツウォッチだし、気を遣わなくていいところもイイですよね。軽いからストレスも感じないし。

 

野﨑:何より、買いやすい価格というのがトドメを刺しますね(笑)。

 

──OGカラーとブルーをセレクトした理由は?

「顔であるOGカラーは絶対に外せませんでした」(野﨑)

「ブルーはアクセサリー感覚で挿し色に使える」(梨本)

 

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野﨑:僕も梨本もそうなんですが、バイヤーとしてそのブランドの顔となるものを扱いたいという想いがあるんです。なので今回のアイアンマンの完全復刻モデルは扱わないわけにはいきませんし、OG(オリジナル)カラーも絶対に外せませんでした。先程述べたように配色も抜群ですからね。ここまで仕上がっているものをイジれないなと思って、今回はあえて別注もお願いしていません。

ブルーをセレクトした理由は、洋服への合わせやすさからですね。OGカラーを知らない若い世代のお客様にも手にとっていただきやすい色だと思いました。

 

梨本 どこかBMWのロゴカラーを彷彿させる(!?)いいブルーの色合いだよね。シーズンを問わずアクセサリー感覚で身に着けていただきたいです。

 

──ずばり、タイメックスの魅力とは?

「媚びない姿勢」(梨本)

「ジャンルごとに顔となるモデルがある懐の深さ」(野﨑)

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梨本:媚びていないところです。キャンパーもそうなんですが、時計としての機能をひたすら追っていて、無駄な機能を付けたりしないところが好きですね。あと、ロゴが好き(笑)。フォントのバランスとか最高じゃないですか。

 

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※野﨑さんの私物のクラシックデジタル(通称:角デジ)。「ストリートカルチャーの匂いがする時計。ゴールドのアクセとマッチングがよくて気に入ってます。調整不要のエクスパンドベルトも理にかなったディテールですよね」と野崎さん。

 

野﨑:魅力はドレスならドレス、カジュアルならカジュアルで、似合うモデルがたくさんあるところ。それぞれのジャンルに、顔となるモデルがある。原宿のお客様にも丸の内のお客様にも、どんなスタイルを好まれるお客様にも提案できるモデルがあるんです。これって長いブランドの歴史がないとありえない、実はすごいことだと思いますよ。