9:3015 Points in the Shape of a Life

Vol. 6 フーリハン氏に聞きました、15の質問。



interview_ デヴィッド・G・インバー / David G. Imber

text_ 吉田実香 / Mika Yoshida



アメリカに1994年から続く、「Inside the Actors Studio(アクターズ・スタジオ・インタビュー)」という名物TV番組がある。アメリカ随一の演劇専門学校である"アクターズ・スタジオ"の生徒を前に、ゲストに招かれた著名な俳優や監督がインタビューを受けるという内容で、本連載5回目で話に出たポール・ニューマンやタイメックスの時計をしてアカデミー賞を取った「7月4日に生まれて」のトム・クルーズも出演した。世界125か国で放映され、日本でも2000年から2013年までNHKで放映されていたのでご存知の方もいるだろう

この番組では毎回終盤に司会者のジェームズ・リプトン(アクターズ・スタジオの学部長、2018年降板、2020年3月死去)がゲストに必ず聞く「10の質問」というコーナーがあり、インタビューも含め他では聞けないゲストの一面を見られることで人気を博した。そこで連載最終回となる今回、我々はこれまで多くのストーリーを分かち合ってくれたフーリハン氏に『15の質問』を聞いてみた。



1.好きな食べ物は?

ペパロニ・ピザ。



2.住みたい場所は?

コネチカットの海岸沿い。



3.お気に入りの道具は?

ペンとコンピューター。



4.お気に入りの素材は?

ドローイング用の上質なペーパー。



5.手に入れてみたい憧れの品は?

1973年シボレー・ヴェガ・カムバック GTだ。状態は良好で、色はシルバー。まず存在しないとされているがね。



6.デザイナーにとって最も大切な素質とは何でしょう?

常に前向きな心構えだ。デザイナーに限らず、誰にとっても一番大事なことだね。



7.ご自身で思う、最も秀でている才能は何でしょうか?

スケッチやドローイング、完成予想図を通じて視覚的なコミュニケーションを図る能力だろう。もちろん、デジタルデザインの現代では無用の長物だが。



8.仕事の中で、好きな作業は?

スケッチ、ドローイング、完成予想図づくりだ。



9.逆にもっとも苦手な作業は?

不愉快な人々を相手にすること。



10.貴方にとって残念なデザインとは何でしょう?

出来の悪いユーザインターフェイスやエルゴノミクス、そして細部への目配りの甘さ。



11.ジャンルを問わず、真の巨匠とみなしている人はいますか?

1960年半ばから後半にかけて、私が在籍していたデトロイトのGMには世界中から選りすぐりのデザイナーが集結していた。GMを中心に、そうしたデザインの巨匠たちと仕事をする機会に恵まれたよ。



12.貴方の心を励まし、やる気をおこしてくれるものは?

妻メアリーの美しい笑顔。



13.デザイナーになっていなかったらどんな職業に就いていたでしょう?

ギタリスト、もしくは小説か歴史の作家だね。(訳注: フーリハン氏の趣味はギター)



14.好きな曲は?

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル (CCR)の『雨を見たかい (Have You Ever Seen the Rain)』。



15.他人への最大の賛辞は?

『あなたは良い人だ』。



JOHN 2019 adjusted.jpgのサムネイル画像

※ジョン・T・フーリハン氏近影(ご本人提供)





■編集後記

"伝説のデザイナー"であるフーリハン氏の名前は10年ほど前から知っていた。しかし、これまでタイメックス本社で彼の名を言う人はなく、また昔を知るベテラン社員も定年などにより殆どが既に退職していて話を聞くことが難しかった。ところが昨年のある日、ふとしたきっかけで親切なアメリカ人編集者が我々とフーリハン氏とを繋いでくれた。数回メールを交わしたのち本人とFaceTimeで話すことができ、幾多の名作を生みだしたレジェンドを前に我々は興奮を隠しきれなかった。

コロナ禍により渡米はもとより米国内でも州を跨いだ移動が難しい中、取材にあたっては幸運にも長らくニューヨークに住まわれアートやデザインなどに造詣が深く、マガジンハウス社のCasa Brutusや森ビルのHILLS LIFEでも執筆や取材をされている吉田実香さん、David G. Imberさんにお力添えいただくことができた。

いまタイメックスのクリエイティブ・ディレクターを務めるジョルジオ・ガリとは毎週、毎月連絡を取っているが、20年前に引退したフーリハン氏がどのような想いや意図でアイアンマン®やデータリンクを含む多くの作品をディレクションしたのか、今回その背景やストーリーを見聞きできたことでより理解が深まると共に、どのタイメックス製品にも携わる人々の知恵や努力や苦労などが詰め込まれているのだと再認識できた。

タイメックスの、もっと極端に言うと"アメリカの神髄"のようなものがこのフーリハン氏の連載やジャーナルを通して伝えられていれば嬉しい。