「アメリカンヴィンテージMIX」をテーマに掲げ、リアルヴィンテージを含む米国プロダクトを中心に、英国や日本のブランドも取り扱う実力派セレクトショップ"Hummingbirds'hill shop"。玄人から見た「良いモノ」がさらりと並ぶ同店のMD、飯嶋聡さんが今回の取材対象者。大手セレクトショップでのキャリアも含め、長きにわたりアパレル業界全体をさまざまな立場から俯瞰してきた彼にとってのTIMEXの魅力に迫る。



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TIMEXとの出会い

「クルマのバックミラーにアメリカ風情の時計を掛けたくて。

24歳、それが出会いのきっかけです」



「あれは1989年のことでした。当時僕が手に入れたダットサンのピックアップトラックには車載の時計がなかったので、バックミラーに掛けておいても絵になる雰囲気のいい腕時計を探していたときに見つけたのがTIMEXのサファリだったんです。小学生の頃から6つ年上の従兄の影響でスケボーやサーフィン、アメフトに興味を持ち、自ずとアメリカンカルチャーにどっぷりハマっていた僕は当時から天邪鬼なところがありまして。

 当時としては珍しいレザーのメッシュベルトをつけた防水ケース仕様のアメリカブランドの時計というサファリの出で立ちにひとめぼれだったんですよね。出会った瞬間に即断で購入したのを今でも覚えています。

 その数年後にクルマの色をオリーブカラーに塗り替えるタイミングで、クルマと同色のTIMEXのキャンパーも手に入れたのですが、この2モデル、特にサファリの方は僕にとっては青春時代を共にした特別な時計ですね。ともにかなりヘビーローテーションで使っていたので今持っているのは2台目になります。」



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TIMEXを身に着ける時

「特に意識はしていないですね。

僕にとってはTシャツのような感覚なので」



「この数年はプライベートも仕事も関係なく普段からいくつかのTIMEXを買い足しながらランダムに使いまわしています。TIMEXはプロダクト自体軽量なモノが多いので、趣味の釣りをするときもラクだし、仕事においてもアメリカンカジュアルウエアとの相性が良いので比較的どんなスタイリングにもマッチしやすいですし。とにかく僕のライフスタイルにとってちょうど良いんです。

 ロレックスなど一般的にハイブランドにカテゴライズされる時計を持っていた時期もあったのですが、なぜか日常生活で使用するモチベーションがいまいち上がらず、気付いたらTIMEXばかり使っている自分がいて。結局、若いころからずっと使い続けているTIMEXが僕の肌に合うというか、Tシャツのように気負いせずラフにつき合える距離感が気持ち良いのだと思います。昔は歴史あるブランドバリューに対してのコストパフォーマンス的な観点でTIMEXを選んでいる側面が強かったのですが、今はシンプルに『好き』という気持ちで選んでいる感じです」



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TIMEXの魅力とは?

「過去に持っていたモデルが今も存在する安心感と

未来もそうあり続けるであろう安心感だと思います」



TIMEXの一番の魅力は過去にリリースされた定番モデルを今でも当時とほぼ変わらぬカタチで新品で手に入れられることだと思います。思い入れの強いアイテムこそヘビーローテーションで使いたくなる僕のようなタイプのヒトからすると、常にそのモデルがマーケットに用意されている安心感があるから、毎日気兼ねなくその時計と対等に向き合えるということもあると思うんですよね。

 たとえば希少すぎたり高価すぎたりするアイテムってどうしても使う側のヒトが気を遣いすぎちゃって疲れちゃう時もあるじゃないですか。TIMEXは良い意味でそういった緊張感が一切ない。好きなモノこそノーストレスで使っていたいというユーザー側の気持ちにTIMEXは結果的に応えられているということが、100年以上世界中で愛されている理由なんじゃないかなと。

 あとはリーズナブルな価格も相まって気軽にコレクションを増やせるのもTIMEXの魅力ですかね。バリエーションとしてもアナログからデジタルまで多岐にわたっていますし、同じモデルでも細かな仕様違いでリリースされることもあるので、ここ最近は特にTIMEXを"集める"ことにもハマってます。個人的な話になりますが、ちょっと前にナイジェル・ケーボンとのコラボレーションモデルの文字盤を、釣りをするときに見やすいように45度傾けてレイアウトするカスタムを知り合いにやってもらったのですが(下記写真右から3本目)、そういった自分色にカスタマイズすることも今後は隙あらばチャレンジしていこうかなと思っています」



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―いま選ぶTIMEX

「外遊び用に"Expedition Gallatin Solar"ですね。

機能性に特化した無骨な見た目が今の気分です」



「今まで、僕にとってのTIMEXは日々の生活に必要な時間を知るための道具である以上に、20代の頃から付き合い続けてきたノスタルジーを感じさせるアイテムという存在だったんです。だから、僕が持っているモデルのほとんどがオーセンティックなデザインのモノが多いわけなのですが、時代も変わり僕も変わっていく中で、TIMEXのいかにも現代的なデザインのモデルにも興味が出てきまして。で、選んだのが "Expedition Gallatin Solar"なんです。過去の定番同様に必要最低限な機能のみを詰め込んだ軽量でシンプルな構成ではあるのですが、このモデルはその名の通りソーラー電池を搭載しているので炎天下に5時間置いておくと4カ月も駆動してくれるらしいんです。

 オーセンティックなモデルばかりを使ってきたTIMEXユーザーとしては無機的でソリッドなテイストな見た目とその仕様を聞くだけでワクワクしますよね() 50m防水のケースでデイト付きということもあり、釣りなどの外遊びをする日は1日これを着けていようと思っています。ちなみに、ベルトにはTIMEX本社のGPS座標の数値が刺繍で入っているのですが、 ここは"Hummingbirds'hill shop"のGPS座標の数値にカスタムしようかと()



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―最後に

「価格やネームバリューのような客観的なステイタスではなくて、自分のライフスタイルに合った主観的なモノ選びこそ、オトナだから楽しむべきことだと思うんです」。そう説いてくれた飯嶋さん。TIMEX165年以上にわたり紡いできた社会的なバリュー以上に、TIMEXを使ってきた人々が紡いできた人間味あふれるバリューが読者に伝われば幸いだ。



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Profile

Le Cottage / 副館長

Hummingbirds'hill shop / MD

飯嶋聡

1965年生まれ。1987年に株式会社鈴屋入社しバイヤー.MD.を歴任。2000年に株式会社ユナイテッドアローズに入社後は店長を経て人事部に。その後、自身の人材育成ケイパビリティを生かしたフリーランス活動を経て、2016年に"Hummingbirds'hill shop"にジョイン。アパレル業界を様々な切り口から見てきた豊富な経験値を元にMDとして手腕をふるう。

ディレクション/中島貴大 文/コボ田形 写真/澤田聖司