本連載、5回目となる今回紹介するのは月岡徹さん。クリエイティブプロデューサーとして、さまざまな企業やブランドのプロモーション、商品企画、イベント設計などを幅広く手掛ける彼が、長きにわたりTIMEXをヘビーユースする理由とはいかに?
―TIMEXとの出会い
「ギアとして、信頼性とカルチャー的なステイタスの高い
低価格な時計を探していたらTIMEXしかなかったんです」
「きっかけは20年ほど前に時計を新調しようと思ったタイミングでした。当時、たまたま僕の周りでちょっとしたロレックスブームが起きていまして、当時から周囲と同じモノを身に着けるのがイヤだった僕は、ロレックス以外でそれ相当な歴史的・文化的背景を持った時計を探していたんです。もともとミリタリープロダクトが好きだったので、その文脈でリサーチを重ねていたのですが、途中で"ディスポーザブルウォッチ"(ベトナム戦争時に米兵士に支給されたことに端を発するシンプルかつ堅牢ないわば使い捨て時計)の概念を知りまして。その代表格として姿を変えずにリリースされていて、かつU.S.A.らしさを貫き通す時計ということで、TIMEXのキャンパーを手に入れることにしたんです。どちらかというと宝飾品のカテゴリに属するロレックスの逆張りとしては、低価格だけど"ギア"としての信頼性とカルチャー的なステイタスの高いキャンパーはまさに僕の理想だなと。初めて購入したこのキャンパーはケースにヒビが2カ所入るぐらいまで使い倒したのですが、いろんな想い出が詰まっているのでなんだかんだ手放せず、今も大事に自宅に保管してあります」
※月岡さんが初めて手にしたキャンパー (1990年にモデルチェンジした後の第2世代モデル)
―TIMEXを身に着ける時
「同じモデルを使い続けることが好きなので
オンオフ関係なく毎日つけていますね」
「僕は自分の中で定番を決めたら、ずっとそのプロダクトを選び続けるタイプでして。僕のファッションのスタイルって、オンオフ関わらず昔からほとんど変わっていないんですよね。今日穿いているこのパンツも、色違いや細かな仕様違いで持っている12本を穿きまわしているし、時計に関しても例外なくそうなんです。キャンパーを初めて手にして以来、僕の中の時計の定番はこれに決まったので、今も自身2代目となるキャンパーを中心に、似たようなデザインのいくつかの時計をその日の気分によって使い分けています。だから、どんな時にTIMEXを身に着けるのか、という質問に対しては"常に"という答えが正しいですね。シンプルな3針のアナログ時計って基本的にどんなスタイリングにも合わせやすいですし、この手のミリタリータイプのベルトは簡単に付け替えができるので、アクセサリーや派手なカラーのウエアを身に着けない僕からすると、腕元で着こなし全体のニュアンスの微調整を行える点においても、便利だったりするんです。我ながら20年前に良い定番を選択したなと思っています」
※月岡さんのコレクションの一部。左からTIMEXとJ. CREWのコラボレーションモデル、34mm径の第2世代キャンパー(現在は廃番)、ギャレット製の湾岸戦争モデル、SOPH.とベンラスのコラボレーションモデル。気分によって付け替えられるベルトも複数所有する。
―TIMEXの魅力とは?
「ひとつの"個体"を気にかけながら大事に使うというよりも
ひとつの"モデル"を末永く使い倒していけるところですね」
「僕にとってのアイテム選びのポイントって、ヒトに見せるための"ファッション"的な要素よりも、ヘビーユースできる"ギア"として自分が満足できるかどうか、ってことの方が大きいんですよね。小学生の頃にボーイスカウトをやっていて、ナイフやコンパスなどの道具を当たり前に使うことに慣れていたので"道具は使い倒してなんぼ"みたいな感覚が当時から染みついているんだと思います。そういう意味でTIMEXは時間を確認するという機能のみに特化した"ギア"として成立しているところが好きですね。過度な機能を敢えて持たせていないから軽いし小さいし、どこまで言ってもディスポーザブルウォッチ的な割り切りもあるから気兼ねなくアウトドア含むあらゆるシーンで酷使できますし。そして、レギュラーモデルであれば、この先もきっと今まで同様に変わらぬ姿でそのモデルがリリースされるであろうという安心感があるから、ひとつの"個体"を大事に使い続けるというよりも、ひとつの"モデル"を買い替えながら使い倒していく楽しみを体験できる。これって、高単価の宝飾品的な時計では絶対にできない付き合い方だと思いますし、低価格な時計の中でもここまでカルチャー的な付加価値のついたものって中々ないと思うので、本当にTIMEXは唯一無二の存在だと思っています」
―いま選ぶTIMEX
「いままで同様、やはり"Camper"ですね。
次はネイビーカラーのケースを選んでみようと思います」
「時計に関してはキャンパー以外の選択肢は僕にはほぼないと言っても過言ではないので、自ずといま選ぶTIMEXもそれになるわけですが、今のベトナム期のオリジナルを復刻したキャンパーってケースカラーがオリーブ、ブラック、ネイビー、文字盤もクリームとブラックから選べるんですね! 今回それを初めて知ったのですが、僕みたいにキャンパー縛りで時計を選び続けている人間からすると、とてもありがたいですよね。同じモデルでもカラーが変わるとだいぶ印象が変わりますし。で、この中からいま選ぶとするなら、ネイビーカラーのケースで、文字盤がアイボリーカラーのタイプですかね。ミリタリー好きとしては、まだ持っていないネイビーカラーはぜひ押さえておきたいなと。少し話がそれますが、やはりキャンパーってケースの薄さや軽さも相まってトップスの袖口に干渉しないのが本当に良いですよね。改めて注意深くキャンパーを腕に着けてみると、なぜ自分がこのモデルを選んだのかがよくわかります(笑)」
―最後に
ディスポーザブルウォッチの概念を日常生活の中でナチュラルに実践し、物質的な時計そのものではなくひとつのモデルとの関係を深く築いていく楽しさを教えてくれた月岡さん。TIMEXだからこそできる価値。否、TIMEXにしかできない価値を本取材を通じて言語化できたことを嬉しく想う。
Profile
tensix 代表取締役
月岡徹
1976年生まれ。ファッションブランドや広告代理店を経て、2019年にtensixを設立。企業やブランドに関わるプロモーション制作や商品企画、フェスやイベントの制作運営など、自身の経験やコネクションを活かしクリエイティブプロデューサーとして活躍している。
ディレクション/中島貴大 文/コボ田形 写真/澤田聖司